第11回 直販モデル/Eコマース

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直販モデル/Eコマース

直販モデル(Direct Selling)

単刀直入な名称が付けられたこのモデルは、その名の通り、小売店やアウトレットといった中間チャンネルを介することなく、製造元から製品を直接提供するというスタイルを意味します。このような当たり前の内容が55のパターンの一つに数えられていることは、ガスマンらの「ビジネスモデル・イノベーションは何ら特別な技量や発想によるものではない」という主張の現れであるといえるでしょう。

改めて考えてみると、直販には、小売業者のマージンやその他のコストを節約して顧客に還元したり、顧客のニーズをより深く理解して製品開発に活かすことができるなどの利点があります。また、営業情報の正確な把握に基づく流通モデルの安定的運用という企業側メリットや、迅速でよりよいサービスを得られるという顧客側メリットもあります。

マジック・トライアングルに当てはめると、「何を売るのか(What?)」「製品やサービスをどのように提供するか(How?)」そして「なぜ儲かるのか(Why?)」の三つを変革するモデルということになります。

このモデルの歴史と活用事例

そもそも、人類最古の商取引は直販であったに違いありません。しかし、何段階もの中間業者を通した商業が当たり前になった現代において、新しい視点で直販モデルを見直してみると、新しい発見が色々とあるものです。

プラスチック容器の商品名「タッパー」を一般名詞たらしめた米国のタッパーウェア社は、俗に「タッパーウェア・パーティ」と呼ばれる営業イベントを顧客の自宅で開催するという新たな直販スタイルを生み出しました。こうした手法は、行き過ぎるとマルチ商法として敬遠されることもあるかもしれませんが、少なくとも「タッパーウェア・パーティ」を全米に広めたブラウニー・ワイズ女史は肯定的な文脈で脚光を浴び、女性として初めてビジネスウィーク誌の表紙を飾るまでになりました。

また、これまで再三にわたり取り上げてきたコンピュータメーカーのデル社も、直販モデルによる成功例の一つであることは言うまでもありません。同社が顧客からの注文を電話で受け付けていた時代には、対象顧客の種類ごとに専用の受付電話番号をいくつも用意し、広告と紐付けるという工夫を行っていました。これにより、どの顧客がどの広告を見て注文電話をしてきたのかを把握でき、より顧客の求めるサービスを正確に提供できるような仕組みになっていました。

直販モデルをどう活かすか?

ガスマンらは、直販モデルの活用の意義は二つあると説明しています。第一には、顧客の情報を正確に記録・把握し、観察できることにより、顧客ニーズの変化に追従できるということ。第二には、営業、マーケティング、製造など、自社内の各部署の連携を最適化できることです。

このモデルを自社ビジネスに活かす上では、自社の営業部隊の規模や教育方法、インセンティブの仕組みや、個別コンタクトによって顧客との親密度を向上させられる具体的な手法や程度について熟考することが重要になるでしょう。

Eコマース(E-commerce)

Eコマースとは、従来は実店舗で提供されていた製品やサービスをオンラインでの提供に切り替えることで、店舗や中間業者のコストを不要にし、顧客にもより安価で迅速に製品やサービスを提供できるという仕組みです。

Eコマースの定義は難しく、いわばWEB上で提供される全ての商業活動がEコマースだとも言えるのですが、ガスマンらが紹介しているウラジミール・ツァースの言説によれば、Eコマースは「通信ネットワークという手段を利用して、ビジネス情報を共有し、ビジネス上の関係を保ち、ビジネスの売買処理を遂行する」営みであると定義できるといいます。

バーチャルな商品販売には、顧客が商品をじかに見て試せないというデメリットがありますが、購入の即時性や無制約性がそれを補って余りあるほどのメリットとなっており、さらに最近では購入者によるレビューや広範な検索システムなども発達したことで、市場の透明性は格段に向上しています。

このモデルをマジック・トライアングルに当てはめると、「何を売るのか(What?)」「製品やサービスをどのように提供するか(How?)」そして「なぜ儲かるのか(Why?)」の 三つを変革する形になっています。

このモデルの歴史と活用事例

電子的なデータ交換の技術がこの世に誕生したのは60年以上も昔のことですが、Eコマースのビジネスモデルを完成させた企業といえば、なんといってもオンライン書店のアマゾン社でしょう。1994年に設立された同社は、書籍の在庫や物流といった従来の書店の物理的制約から解き放たれ、莫大な品揃えで一気に世界を席巻することができました。

衣料品のエイソス社、靴のザッポス社、印刷のフライヤーアラーム社(いずれも米国)など、この分野に参入して成功を収めている企業は枚挙にいとまがありません。

Eコマースをどう活かすか?

Eコマースには、取引をオンラインで完結できるという見かけ上のメリットのみならず、ビッグデータの蓄積や、検索・取引履歴のデータ活用など様々な可能性があります。また、BtoBの分野に目を向ければ、Eコマースの導入により、費用対効果の向上や、取引コストの削減といったメリットを得ることもできます。

このモデルの採用に際しては、Eコマースが自社の顧客に価値をもたらすか、また自社のコスト削減に繋がるかをまず考える必要があるでしょう。その上で、顧客が必要とする情報をデータ管理し、オンラインで提供する仕組みを構築し、自社の営業上の強みや競合優位性を高めていく実践が不可欠になってきます。