第10回 カスタマーロイヤルティ/デジタル化

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カスタマーロイヤルティ/デジタル化

モデル10. カスタマーロイヤルティ(Customer Loyalty)

「カスタマーロイヤルティ」は日本語に訳せば「顧客の忠誠心」といった意味合いになります。その名の通り、自社ブランドに対する顧客の忠誠心を獲得するため、製品やサービスの本来の価値を超えた付加価値を提供するのがこのビジネスモデルになります。

その典型的な例はポイントカードです。誰もが何枚かは財布に持っているであろうポイントカードは、企業や店舗が顧客の心を繋ぎ止めるための最も単純かつ効果的なツールです。ポイントの還元率は1%~10%程度にすぎないにもかかわらず、顧客は喜々として店を繰り返し訪れ、熱心にポイントを貯めてくれます。こうしたインセンティブによるリピーター獲得もさることながら、重要な顧客データを収集し、事業運営に活かせるという点も企業にとってのメリットになります。

マジック・トライアングルで言えば、「何を売るのか(What?)」「なぜ儲かるのか(Why?)」の2つを変革するモデルです。

このモデルの歴史と活用事例

現代のポイントカードに繋がるビジネスモデルの歴史は、18世紀まで遡るといいます。製品や商品券と交換できるバッヂやスタンプを顧客に配るというモデルは、18世紀から19世紀にかけて広く普及しました。現代における広範囲のロイヤルティプログラム実施例としては、米国のスペリー&ハッチンソン社が展開した「グリーンシールドスタンプ」の制度が有名です。

運輸業界で初めてロイヤルティプログラムを導入したのは、米国のアメリカン航空社です。同社は常連の搭乗客に対し、飛行機の予約のためにマイル・ポイントが貯まっていくプログラムを提供し、強固なリピーターの獲得に成功しました。今日、マイルのシステムはあらゆる航空社が導入するグローバル・スタンダードとなっています。

カスタマーロイヤルティをどう活かすか?

カスタマーロイヤルティの獲得は、特別なビジネスモデルのパターンというより、あらゆる事業において必須の課題ともいえるでしょう。競合他社との競争が激化の一途をたどる現在においては、機能的価値と情緒的価値の両面において顧客の心を繋ぎ止めていくことはブランド力の維持のために欠かせません。

カスタマーロイヤルティに関するビジネスモデルを革新するには、顧客と意思疎通を図るための適切なチャンネルの選択や、顧客のニーズを理解するためのコミュニケーション手段の模索、顧客に価値を提供する手段の創出などが必須の考察課題となってきます。

モデル11 デジタル化(Digitisation)

近年、あらゆる事業分野で著しくデジタル化が進行しています。デジタル化をビジネスモデルとして改めて捉えてみると、既存の製品やサービスのデータをデジタルで扱うことで、中間業者の排除、無駄の削減、配送の自動化などのメリットが容易く実現されていることがわかります。いわばデジタル化とは、既存ビジネスをデジタル空間に「再現」し、ビジネスプロセスや機能の一部をネット上に移転する仕組みなのです。また、既存ビジネスのみならず、ネット以前には考えられなかった全く新しい製品やサービスの提供も多くなされています。

マジック・トライアングルに当てはめると、「何を売るのか(What?)」「製品やサービスをどのように提供するか(How?)」の2つを変革するモデルといえます。

このモデルの歴史と活用事例

デジタル化は、コンピュータや通信技術の進歩に伴って発展してきたビジネスモデルであり、ガスマンらが挙げる55のパターンの中でも比較的歴史の浅いものです。当初は銀行の内部インフラなど限定的な使用に限られていたデジタル化ですが、1990年代に入ってインターネットが普及するにつれて、個人消費者向けにも様々なデジタルサービスが誕生しました。

米国の大学ラジオ放送局でありWXYCは、従来のFM放送のみならずインターネット放送によるラジオ配信に乗り出すことで、24時間365日放送を実現し、デジタル化の潜在的な可能性を具現化しました。また、米国のジョーンズ・インターナショナル大学は、オンラインのみで講座を運営する初の大学として1999年に認可を受け、eラーニングと呼ばれる遠隔教育の可能性を広く社会に呈示しました。

さらには、FacebookなどのSNSもデジタル化の一種に数えることができますが、ガスマンらは、いわゆる「SNS疲れ」の例にも触れ、大衆はより小規模でプライベートなオンラインのプラットフォームを求める流れにシフトしていくだろうとの予想も述べています。

デジタル化をどう活かすか?

デジタル化は、典型的なインターネットビジネス以外にも、IoT(モノのインターネット)技術の普及を通じてあらゆる事業に必須の要素になるでしょう。ガスマンらは、1990年代以降の20年間で仮想世界と現実世界の融合が始まったと述べ、将来的には世の中の製品やサービスのほぼすべてがデジタル化と何らかの接点を持つことになると予想しています。

デジタル化を自社ビジネスに活かすにあたっては、ソフトウェアを取り入れることで価値の向上が見込める自社製品の部分を絞込、かつデジタル化による新たな価値の収益化の方法を真剣に検討する必要があるでしょう。