第9回 クラウドファンディング/クラウドソーシング

    Posted in: ビジネスモデル革新

モデル8. クラウドファンディング(Crowdfounding)

 近年ネット上で注目を集めている「クラウドファンディング」とは、プロジェクト資金の調達を一般大衆にアウトソーシングするというビジネスモデルです。通常、企業が新しい事業を始める場合のスポンサーは銀行や大株主といった大手投資家ですが、このモデルではあえて大手投資家の影響力を排除し、個人の支援者からの資金で事業をスタートすることを主軸に置いています。

 手法としては、まずプロジェクトの発表を行って認知を高め、何らかの報奨と引き換えに個人投資家からの小口の支援を募るというプロセスをとります。プロジェクトを事前に発表することで、実質的に無償で宣伝を行うことができ、また資金提供者を個人に絞ることで自らに有利な形での資金調達を実現できます。

 マジック・トライアングルで言えば、「製品やサービスをどのように提供するか(How?)」「なぜ儲かるのか(Why?)」の2つを変革するモデルです。

このモデルの歴史と活用事例

 古来、宗教施設やその他の建造物の建設資金を大衆から募るということは一般的でした。現代におけるクラウドファンディングの隆盛はもちろんインターネットの登場に伴うものです。早くも1997年には、英国のロックバンド「Marillion」が米国ツアーの旅費をファンから募るクラウドファンディングを行い、大いに話題になりました。

 クラウドファンディングを採用した成功例としては、米国のペブル・テクノロジー社が有名です。スマートウォッチ(スマートフォンの機能の一部を搭載した腕時計)の開発を手がけるスタートアップ企業(日本でいうところのベンチャー企業に近い存在)であった同社は、2012年、10万ドルの開発資金をクラウドファンディングで募集し、一躍話題になりました。デザイナーかつエンジニアである代表のエリック・ミンコフスキーの熱意が全世界に伝わり、同社は、7万人近い協力者から、なんと目標額の100倍である1030万ドルを集めることに成功したのです。

クラウドファンディングをどう活かすか?

 クラウドファンディングがうまく機能すれば、無金利での資金調達が可能になることに加え、プロジェクトの初動段階からアイデアの有効性や施策の成否を見極めることができるというメリットがあります。

 自社ビジネスにこのモデルを採用するにあたっては、多くの人から出資を集められるだけの魅力があるか、合法的に報奨を提示できるルール作りができるか、知財対策をどうするか、などを考える必要があります。また、肝心の出資者がその後も自社の顧客となり、さらには製品やサービスのファンになってくれるかということも勿論大切です。

モデル9. クラウドソーシング(Crowdsourcing)

 個人の副業の世界でも一般的となってきた「クラウドソーシング」とは、課題の遂行を外部の人員にアウトソースする手法のことです。その本質は、課題を一般告知することで、イノベーションや知識の源泉を広く世間一般に拡大し、より低価格であったり効果的であったりするソリューションの可能性を広げることにあります。

 課題に取り組んでもらうための動機としては、金銭的な報酬のみならず、自社への愛着心や純粋な知的好奇心に訴えかける場合もあります。
 企業は、クラウドソーシングを通じて、将来の製品やサービスに対する顧客の要望や好みを見出すこともできます。

 マジック・トライアングルで言えば、「製品やサービスをどのように提供するか(How?)」「なぜ儲かるのか(Why?)」の2つを変革するモデルです。

このモデルの歴史と活用事例

 18世紀の英国では、航海中の船舶の経度を測定する方法を見つけた者に、政府が莫大な報奨金を提供するという政策が行われた記録があります。公募開始から実に60年後、ジョン・ハリソンがクロノメーターを用いた経度測定の実用的方法を発明し、報奨金を手にしました。

 このように、ビジネスモデル自体は古くから存在したものですが、「クラウドソーシング」という用語は2006年に「WIRED」誌のジェフ・ハウ編集長が生み出したといいます。先述のクラウドファンディングと同様、インターネットの普及に伴い、クラウドソーシングは一気にその実用性を拡大しました。

 クラウドソーシングを有効活用した事例としては、世界中のデザイナーからTシャツのデザインを募り、顧客投票で高評価だったものを製品化するという仕組みを作ったスレッドレス社や、若いイノベーターをターゲットとしたイノベーション戦略のコンテストを開催しているシスコシステムズ社(いずれも米国)などがあります。

 また、自社の事業のためのクラウドソーシングを直接行うのではなく、企業とクラウドを結びつけるプラットフォームを提供するというビジネスも盛んに興っています。企業が仕事の公募を掲載し、個人のクリエイターがそれに応えるというプラットフォームは、日本でもランサーズやクラウドワークスなど有力なものが多く誕生しています。

クラウドソーシングをどう活かすか?

 クラウドソーシングを上手く使いこなせるかどうかは、企業がもともと創造的な風土を有しているかに左右されます。もとより創造的でない企業では、せっかくのクラウドソーシングも機能せず、アイデア不足をクラウドのせいにするという本末転倒な結果になってしまうこともあります。一方、創造的な社風を持つ企業であれば、イノベーションやアイデア創造のプロセスをクラウドソーシングによって大幅に発展させることができるでしょう。また、クラウドソーシングに参加した顧客が、その後もブランドに愛着を持ってくれるという副次的メリットもあります。

 自社のビジネスにこれを採用するにあたっては、クラウドが集まるコミュニティの育成、自社の課題の具体的説明、最良のアイデアの明確な判定方法、評価プロセスの定義とユーザー周知などが課題になってきます。

 また、クラウドソーシングのプラットフォームとしてビジネスを興すなら、具体的な市場が存在するテーマやコミュニティを上手く選び、企業や個人を惹き付ける魅力的なプラットフォームを構築する必要があります。