第6回 アフィリエイト/合気道

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モデル2. アフィリエイト(Affiliation)

 「アフィリエイト」のビジネスモデルは、自社の製品やサービスを独力で宣伝するのではなく、アフィリエイターと呼ばれる多数のパートナーに宣伝を担わせるものです。WEBサイトやブログにアフィリエイトのバナー広告が貼られている光景は誰もが日々目にしているものでしょう。アフィリエイターは、バナー広告のクリック回数や成約件数に応じて報酬を受け取ることができるため、せっせと宣伝活動に励んでくれます。製品やサービスを売る会社からすれば、自社で営業やマーケティングに資産を投入せずとも、アフィリエイターを介して様々な顧客に宣伝を届けることができるというメリットがあります。

 マジック・トライアングルでいえば、「どのようにサービスを提供するか(How?)」「なぜ儲かるのか(Why?)」の二つを変革するモデルといえます。

このモデルの歴史

 アフィリエイトの発想自体は、保険販売員が契約獲得に応じて報酬を受け取る仕組みのように、古くからありふれたものでした。しかし、今日「アフィリエイト」という言葉から一般に連想されるのは、先述したWEB上のバナー広告でしょう。インターネットが一般家庭に普及した1990年代後半には、今日と同様のアフィリエイト・プログラムは既に一般的なものになっていました。当初はアダルトサイトを中心に広まっていたアフィリエイト・マーケティングは、1996年にオンライン書店のアマゾンが利用を開始したことで一気に普及し、ネット社会の根幹をなすビジネスモデルの一つとなりました。

このモデルの活用事例

 アフィリエイトのモデルは、製品やサービスを売る側(アフィリエイターに報酬を支払う側)として利用するのも有用ですが、アフィリエイター側に回ることによっても大きなビジネスを生み出すことができます。そうした企業の代表格としてガスマンらが挙げているのが、米国のソーシャル・ネットワーク・サービス「ピンタレスト」です。ピンタレストのユーザーは、サイト上に自分の写真ボードを持ち、気に入った写真とそのリンクを貼っていくことができます。ここで、WEB上で販売されている製品の写真をユーザーが貼った場合、その写真は製品の販売元サイトへのアフィリエイト・リンクとなり、ピンタレスト社には販売元からのアフィリエイト報酬が入るのです。

アフィリエイトをどう活かすか?

 アフィリエイトは、販売元とアフィリエイターの両者にWIN-WINの関係をもたらす魅力的なビジネスモデルといえます。
 自社のビジネスに活かす上では、最適なアフィリエイターの選別の方法や、不適切なアフィリエイトが行われた場合の顧客クレームへの対応などを考える必要があります。また、アフィリエイター側として参画する場合は、収入源の不確定さへの対処が主眼点となるでしょう。

モデル3. 合気道(Aikido)

 日本の武術の名が付けられたこのビジネスモデルは、敵の攻撃の勢いを利用する合気道のごとく、業界の水準とは逆方向をいく製品やサービスを提供するというものです。言い換えれば、競合他社と正反対のポジショニングを取ることにより、直接対峙する必要性を排除するということであり、「ブランディング講座」でご紹介してきた「ブランディングにおけるゲリラ戦」の考え方と似ています。
 マジック・トライアングルに当てはめると、「何を売るのか(What?)」と「なぜ儲かるのか(Why?)」の二つを変革するモデルということになります。

このモデルの歴史と活用事例

 敵の逆を行くことで、敵の武器を敵自身に向けさせるという戦術は古くから存在したものです。ガスマンらは、ビジネス領域で早くからこのモデルを採用していた例として、米国の遊園地運営企業、シックス・フラッグス社を挙げています。同社は米国各地とカナダ、メキシコに遊園地を展開していますが、ディズニーランドなどの全国的なテーマパークとは異なり、地元の顧客を呼び込むことに特化した地域密着型の経営を重視しています。地域でのリピーターを増やすことで、広告宣伝費を抑えつつ高い収益が実現でき、また長期休暇のシーズン以外でも地元顧客の来園が見込めるというメリットがあります。

 その他にも、「合気道」モデルの成功事例は枚挙に暇がありません。広告キャンペーンを最小限に抑えながら、天然素材の化粧品というニッチ市場を創出した、英国のボディショップ・インターナショナル社。高級腕時計のイメージから離れ、ファッションアイテムとしての腕時計を打ち出したスイスのスウォッチ社。サーカスの目玉である動物の曲芸を廃し、オペラやバレエ、舞台演劇などの要素をサーカス芸に組み込んだカナダのシルク・ドゥ・ソレイユ社。リモコンを手に、身体を動かして遊ぶという全く新しいテレビゲーム「Wii」を生み出した任天堂。

 いずれの企業も、その業界で常識とされているやり方を大胆に裏返し、まさに自らの腕力を振るわずに敵を倒す合気道のように、競合他社を出し抜いていったのです。

合気道をどう活かすか?

 合気道のビジネスモデルはいかなる業界にも適用可能ですが、これを導入するためには、外部からの客観的な視点で市場の動きを確認することが必要不可欠です。

 自社ビジネスでこのモデルを活かすためには重要なポイントが二つあります。まず、業界水準の逆を行くビジネスを自社が始めた際に、ついてきてくれる先導的顧客はいるのか。そして、既存の競争ルールを覆そうとする上で生じる様々な障害を自社は乗り越えることができるのか。合気道モデルは、入念な下調べと準備、そして相当な勇気を必要とするビジネスモデルだといえるでしょう。