第13回 ブランドネーミングの重要性

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ブランディングには良いネーミングが必要不可欠

ネーミングはブランドの行方を左右する重要な要素です。あるブランディング企業の経営者が主催しているネーミング専門のセミナーでは、以下のような質問が発せられます。

「双子の美人姉妹がいます。一人は美咲、一人は和子といいます。どちらに会ってみたいですか?」

双子ですから見た目に差はないはずなのですが、大抵の男性参加者が「美咲に会いたい」と答えるそうです。和子も良い名前ではありますが、和子よりも美咲という名前のほうが「会ってみたい」と男性に思わせる力を持っているということです。

これはビジネスにおけるブランディング戦略でも同じことです。大多数の人が「いいものに違いない」と感じるような名前を付けることができれば、その名前自体がブランドの看板になり、顧客を集めてくれるのです。

では、どのようなネーミングがブランディングにおいて有効なのか考えてみましょう。

規則性のない横文字の羅列は覚えられない

突然ですが、次に挙げるワンセグチューナーの名前を覚えられるでしょうか?

1.「W-ONE GH-15T-U2K」

2.「SEG CLIP GV-SC300」

3.「DT-007VK」

いずれも実在する商品名ですが、はっきり言ってこれらの名称がブランドとして顧客に認知されるのは不可能に近いでしょう。名前が難しすぎて覚えようがないからです。この例に限らず、アルファベットの羅列やロット番号によるネーミングでは、そのブランドが持つ価値を消費者に伝えることはできません。

三菱東京UFJ銀行がサービスの名前に用いている「MUFG」というアルファベットの並びも、なかなかに覚えづらいものです。「MUFG」とは持株会社である「三菱UFJフィナンシャル・グループ」の頭文字を取ったものなのですが、そこまで知らなければ、三菱東京(M)とUFJだから「MUFJ」だったかな?と誤解してしまう方も多いでしょう。

名前を正しく覚えてもらえないのはブランドにとって致命的なことです。略称的なアルファベットの羅列は、ブランディングの観点からは避けるべきネーミングだと言えるでしょう。

ブランド価値をダイレクトに伝えるネーミング

以下の二つのブランド名を見比べてみてください。どちらが美味しそうに感じるでしょうか。

1.「ネスカフェ・ゴールドブレンド」

2.「ネスカフェ・テイスターズ・チョイス」

この二つはいずれも同じ商品です。日本で「ゴールドブレンド」として売られている商品が海外では「テイスターズ・チョイス」という名前で売られているのですが、日本でこの名前だったらそこまで売れなかったのではないかと思われます。日本人にとって「ゴールドブレンド」というブランド名は、コーヒー豆の絶妙なブレンドや、豆を炒る際の芳醇な香りなどを想起させるものです。このように、ブランドの持つ価値をダイレクトに消費者に伝えるネーミングこそがブランディングにおいては望ましいと言えるのです。

もっと分かりやすい例では、ポッカサッポロフードの「じっくりコトコト煮込んだスープ」などはいかがでしょう。名前を見た瞬間にどんなものかがわかり、ブランド価値が伝わります。改まって広告など打たなくても、この商品名で店頭に置いておくだけで広告効果があります。

他の何かと混同されないネーミング

これまでの記事で再三述べてきたように、ブランドには個性が重要です。その観点で言えば、ブランドのネーミングには、競合他社のブランドや他ジャンルのブランドと混同されないユニークさも必要不可欠です。

以下に挙げるのはビールのブランド名ですが、それぞれどの会社から出ているどのような商品か答えられるでしょうか?

1.「ジョッキ生」

2.「のどごし生」

3.「生搾り」

4.「ぐびなま」

5.「本生」

これらの商品の違いを正確に説明できるのは、業界人でなければ余程のビール通の人だけでしょう。どのブランドも判で押したように「生」の連続なので、消費者は混乱してしまうのです。

この点、かつて存在した「さくら銀行」は大変良いネーミングだったといえます。伝統的に「住友」「三菱」といった財閥系の名前が多い銀行業界において、このような名前は強いインパクトがあり、他の銀行と混同されるおそれもありません。現在は住友銀行と合併して「三井住友銀行」になってしまいましたが、「さくら」という名前をどこかに残しても良かったのではないかと思われます。

東映が展開するヒーロー番組の「スーパー戦隊シリーズ」でも、近年は特に「他の作品と混同されないネーミング」が重視されている傾向があります。まず、以下のネーミングを見てみてください。

1. 電撃戦隊チェンジマン

2. 超新星フラッシュマン

3. 光戦隊マスクマン

4. 地球戦隊ファイブマン

これらはいずれも1980年代の作品名です。ファンの方には申し訳ないですが、どれがどんなヒーローなのか名前からはほとんど伝わってきません。一方、最新の2010年代の作品は以下のようなネーミングになっています。

1. 侍戦隊シンケンジャー

2. 獣電戦隊キョウリュウジャー

3. 烈車戦隊トッキュウジャー

4. 手裏剣戦隊ニンニンジャー

いかがでしょうか。1は侍、2は恐竜、3は電車、4は忍者をモチーフにした作品であることが誰にでもわかります。スポンサーのバンダイにとって、毎年飽きずにおもちゃを買い続けてもらうことは至上命題ですから、視聴者である子供やその親が一目見て他と区別できるネーミングが必要不可欠になるのです。

ブランド名はそのブランドのアイデンティティとなるものであり、ブランディングにおいて最優先で取り組むべき課題の一つです。ブランド価値の伝達と他との区別という観点から、いかに優れたネーミングを打ち出せるかにブランディング戦略の成否が懸かっていると言えるのです。