第41回 ブランド顧客の4分類

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ブランド顧客の姿を知る

ブランド・エクイティについての記事の中で、ブランドとは、顧客の意識の中に存在する資産であると述べました。ブランディングを成功に導くためには、顧客の心を掴み、顧客を味方に付けなければなりません。

そこで今回は、ブランドの顧客の性質や動向に焦点を当て、どのような顧客を獲得することがブランディングの鍵を握るのかを考えてみましょう。

ブランド顧客の4区分とは

顧客層を性質や動向に基づいて区分する考え方は1960年代から知られていました。ロジャースの普及学では、新商品や新サービスを採用するのが早い順から、①革新者(イノベーター)、②初期採用者(アーリーアドプターないしオピニオンリーダー)、③前期追随者(アーリーマジョリティ)、④後期追随者(レイトマジョリティ)、⑤遅滞者(ラガード)の5区分に顧客を分類することが行われています。マーケティングにおいては、イノベーター層の採用を切っ掛けに、アーリーアドプター層やオピニオンリーダー層に切り込み、彼らの口コミをもって、それ以下の階層の顧客にまで広く商品を知らしめるという戦略が展開されます。

ここでは、ブランディングに話を絞るため、より単純な顧客の区分を導入してみましょう。ブランドがその顧客に与えうる影響と、逆にその顧客がブランドに与えてくれる影響という2つの次元から、顧客層を4つに区分するのです。①ブランド・サポーター、②ブランド・キャスター、③ブランド・パートナー、そして④一般顧客という4分類です。それぞれの意味については後述します。

ブランドが顧客に与える影響が強いというのは、その顧客のブランド・ロイヤリティ(忠誠心)が高いということであり、マーケティングの用語でいえば「顧客生涯価値」(その顧客が生涯にわたりブランドにもたらしてくれる利益)が高いことを意味します。また、顧客がブランドに与える影響が強いというのは、その顧客が新たな顧客を連れて来てくれることを意味し、ブランドにとっては新規顧客の獲得コストを下げてくれるという意味があります。

ブランド・パートナーがブランドの中核となる

4つの顧客区分の中で最もブランディングの核となるものが「ブランド・パートナー」です。この層には、顧客生涯価値も高く、また顧客獲得コスト低減への貢献度も高いという顧客が属します。つまり、自らもそのブランドの大ファンでありつつ、同時に周囲の人々にもブランドを積極的に勧めてくれる人々ということです。

例えば、iPhoneやiPadの新製品が出るたびに、徹夜でアップルショップに並んで誰よりも早く新製品を手に入れ、日常の生活の中でもそれらの機器を積極的に使いこなしているという人々。あるいは、ある健康飲料を一日一本は必ず飲むというほど愛飲しており、周囲にも「健康に良い」といってその飲料を勧めてくれるような人々。はたまた、アイドルグループのCDを一人で何十枚と購入し、握手会や人気投票に熱心に参加するような人々。彼らはブランドの収益を支える優良顧客であるとともに、ブランドの魅力を周囲に向けて発信してくれる有力な宣伝者でもあるのです。

こうしたブランド・サポーターをいかに大量に獲得し、維持していくかが、ブランディングの成否を左右するといえます。

その他の区分の顧客がもたらす価値

二つ目の顧客区分である「ブランド・キャスター」は、自身の顧客生涯価値は決して高くないものの、顧客獲得コストの低減には大いに貢献してくれる人々です。流行に敏感な若年層などが当てはまることが多いといえます。この顧客自身は長きにわたるファンにはなってくれませんが、ブランドを流行に乗せる一端を担い、広く一般顧客層にまでブランドの魅力を伝えてくれる力を持っています。

逆に、「ブランド・サポーター」とは、顧客生涯価値は高い反面、ブランドの宣伝には貢献してくれない顧客層です。顧客生涯価値の平均を上げてくれる存在であるため、離れていかないよう繋ぎ止める工夫が必要になります。

最後に「一般顧客」は、トータルでの消費量は期待できるものの、品質よりも価格を重視する傾向のある人々のことです。ブランディングの「目的」となる対象ではなく、上位3区分の顧客の獲得に努めてきた「結果」として付いてくる顧客層と考えるべきでしょう。

優良顧客の条件とは

ブランドにとって有難い顧客とは、以下3種類の特徴を持つ顧客であるといえます。

  1. 自社ブランドの利用金額が高い
  2. 価格よりも品質を重視する傾向が強い
  3. 情報発信力が強い

一般顧客はこのいずれの特徴も持たない人々です。ブランド・キャスターは、1は欠けていますが2と3が高く、逆にブランド・サポーターは1と2が高いかわりに3がありません。1・2・3の特徴を兼ね備えたブランド・パートナーは、ブランドにとっての最優良顧客ということになります。

しかし、ここで注意すべきは、ブランド・パートナーだけを相手にした商売をしていても、強いブランドは育たないということです。ブランド・パートナーはブランドが最初に獲得に務めるべき顧客ではあるのですが、顧客層全体の中でみると一握りの存在でしかありません。ブランド・パートナーの獲得と維持に成功したら、次にその勢いをブランド・キャスターや一般顧客に波及させていかなければ、一般知名度の高いブランドは作れないのです。

次回以降の記事で、顧客層の拡大に向けた具体的戦略を見てみましょう。