第7回 ブランドを構成するベネフィット

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ブランドイメージの醸成に必要なこと

ブランディングの現場においてはよく「ブランドイメージを伝える」とか「ブランドイメージを打ち出す」といった言葉が使われます。しかし、自社のブランドイメージを消費者に伝えるというのは、具体的にはどういうことを指すのでしょうか。

ブランドイメージというのは、あの企業のサービスは信頼性が高いとか、○○という商品は安価でオシャレだとかいった認知や連想のことですが、それは企業やその商品・サービスを目にした消費者の心の中におのずと形作られるものです。企業や商品自体が元々ブランドイメージを持っているわけではありません。したがって、企業からできるのは、ブランドイメージを「伝える」ことではなく、「企業自身が望むイメージに近いブランドイメージを、消費者の心の中に描かせる」ということになります。どのようなブランドイメージが形成されるかはあくまで消費者の心の問題であり、企業はそれに影響を与えることしかできないのです。

ですから、ブランディングにおいては、消費者側の心理を無視して自社に好都合なイメージを一方的に発信するというのは論外です。よくブランディングの失敗例として挙げられるのが、企業が勝手に考える「カッコイイデザイン」の商品や「面白いコンテンツ」のWEBサイトを消費者に押し付けてしまい、空回りするというケースです。良質なブランドイメージを醸成するためには、消費者の心理を理解することが必要不可欠なのです。

消費者がブランドイメージを抱く瞬間

それでは、消費者の心の中にブランドイメージが形成されるのはどのような時でしょうか。それは、商品やサービスのブランドが持つベネフィット(便益、得すること)を、自分自身に関連するものとして感じ取ることができた瞬間だといわれています。消費者が求めているのはモノやサービス自体ではなく、それを通じて得られるベネフィットなのです。マーケティング界のドラッカーと称されたセオドア・レビットは、「ドリルを買う人が求めているのは、ドリルではなく穴である」という有名な言葉を残しています。

ベネフィットに関しては「自分自身に関連するものとして」という点が重要です。例えば、女性の日常生活を便利に助けるアイテムがあったとしても、独身男性がそれに興味を示すことは稀でしょう。しかし、既婚男性であれば、奥さんの日常を思い描くことで「このアイテムは妻が気に入るかも」と関心を持つかもしれません。また、特定の職業に関連したブランドや、著しく高価な贅沢品のブランドなども、興味関心を持つ主体が限定されるジャンルといえるでしょう。

ブランディングの過程でターゲットユーザーを絞り込む際には、自社のブランドにベネフィットを感じてくれるのはどのような層なのか検討し、それに合ったブランドイメージの醸成に努めることが重要です。

ブランドを構成する3種類のベネフィット

ブランドの持つベネフィットには、「機能ベネフィット」「情緒ベネフィット」「自己表現ベネフィット」の3種類があるとされています。それぞれの性質を見てみましょう。

  1. 機能ベネフィット

利便性や効能など、ブランドの持つ機能的側面によって与えられる価値が機能的ベネフィットです。機能や性能は勿論のこと、原材料、安全性、サポート、付帯サービスなど、商品本来の性質が消費者に与える便益を指します。使い勝手がいい、安価である、美味しい、健康にいい、省エネである、立地がいい、などのベネフィットが考えられます。

  1. 情緒ベネフィット

情緒ベネフィットとは、楽しい、落ち着く、安心感がある、高級感がある、格好いい、流行に乗っているなど、消費者に心地良い感情を抱かせる情緒的側面が与える価値です。デザインや質感のほか、原産地、物語性などもこれにあたります。

  1. 自己表現ベネフィット

自己表現ベネフィットは、そのブランドを所持していることが自己アピールや社会的評価に繋がるというような価値です。周囲に自慢できる、高収入を証明できる、ポリシーを代弁できる、こだわりを表現できる、などのベネフィットが存在します。

この3つのベネフィットの内、どれを最も大事にするかはブランドごとに異なってしかるべきです。例えば、高級ホテルのブランドの場合、立地の良さなどの機能ベネフィットも少なからずあるとはいえ、より重視されているのは高級感や快適さなどの情緒ベネフィットや、宿泊客のステータスをくすぐる自己表現ベネフィットの方でしょう。一方、弁護士事務所のブランドの場合、そこを訪れることは周囲に自慢できるようなことではないので、自己表現ベネフィットはほぼ存在せず、情緒ベネフィットも信頼感を謳うくらいがせいぜいでしょう。そこでは料金体系や解決実績などの機能ベネフィットが大部分を占めるのではないかと思われます。

また、消費者の方でも、どのベネフィットを重視して購買行動を起こすかは人それぞれで違っています。例えばファッションを選ぶ際、防寒性や安価であることなどの機能ベネフィットを重視する人もいれば、流行やブランド名などの情緒ベネフィットや自己実現ベネフィットを重視する人もいます。何を重視するかによって、当然、求める商品やサービスにも違いが出てきます。

ブランドイメージの醸成を狙うにあたっては、まず、どのベネフィットを重視して消費者に伝えるのかという点を明確化する必要があります。明確化がしっかりできていれば、ベネフィットと結びついたブランドイメージを活用したブランディング施策や、競合の脅威への素早い対処も可能になります。