第6回 人材採用のブランディング

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採用ブランディングとは?

企業にとって重要な活動の一つに人材採用があります。求める人材の傾向は仕事によって様々ですが、いかなる企業であっても、自社の事業内容や社風に合った優秀な人材を採用したいという思いは同じでしょう。

そして、ブランディングが多くのビジネスシーンで意識されるようになった現在、この人材採用という活動もまた、企業が自社のブランドイメージを社会に発信する手段の一つとなっています。それが採用ブランディングと呼ばれるものです。商品やサービスに関するブランディングは消費者に訴えかけるものですが、採用ブランディングの場合、訴えかける相手は主として新卒や中途などの求職者ということになります。

正負のブランドイメージが採用に影響する

「ブラック企業」という言葉も今では一般的なものになりました。どこそこの企業がブラックであるという噂が立てば、求職者はその企業の求人に応募することに慎重になる。これはいわば「負のブランディング」が成立してしまっている状態です。ならば、逆に、採用活動に関して正のブランディングを成立させ、求職者に自社の魅力をアピールすることもできる――これが採用ブランディングの考え方です。

ただし、ここでは負のブランディングの例として「ブラック企業」を挙げましたが、単にそれを裏返して、労働環境がホワイトであることを前面に打ち出せば正の採用ブランディングになるという訳ではありません。むしろ、労働環境のホワイトさを強調するばかりでは、良い応募者は集まらないでしょう。それでは自社独自の個性や魅力が表現できていないからです。他社とは違う、自社ならではの魅力や働き甲斐を表現できてこそブランディングになるのです。

採用ブランディングの目的と効果

そもそも、人材採用において避けなければならない失敗パターンとはどういうものでしょうか。

まず、求人広告を打っても人が集まらないというケースが有り得ます。最も論外と言うべき状態ですが、新卒採用にせよ中途採用にせよ、この段階で早くも壁に行き当たってしまう企業というのは案外多いものです。次に、求人への応募自体はそこそこ集まるものの、説明会や面接を経た時点でその後の選考を降りられてしまったり、内定を出しても辞退されてしまうという場合があります。これもまた企業にとっては痛手と言えます。しかし、もっと最悪のパターンは、採用、入社までようやく漕ぎ着けても、社員がすぐに退職してしまうという事態でしょう。これを「今時の若い者」論で片付けても仕方がありません。ミスマッチの原因は企業側にあることがほとんどなのです。

採用ブランディングの目的は、こうした失敗パターンを回避し、自社とマッチする人材を効率的に確保することにあります。それぞれの失敗パターンに対し、有効なブランディング手法が存在します。まず、応募者が集まらない状態を回避するためには、何よりも自社の認知度を上げる必要があります。そこで、採用ターゲットを絞り込み、局所戦で認知度の向上を図ります。そして、内定を得た応募者が周囲に自慢したくなるような企業ブランドを確立させることで、選考過程でのドロップアウトを防ぎます。最後に、入社後の早期退職を防ぐためには、何よりも自社と応募者との相互理解が必要不可欠です。相互理解を形成するのには、WEB媒体を利用したブランド認知の向上が効果的です。

採用ブランディングで打ち出すべき内容

労働環境のホワイトさを打ち出すだけではブランディングにならないと上で述べました。ホワイト企業であることをどれほど強調しても、世の中に決して少なくはない「ホワイト企業というカテゴリーに属する会社の一つ」にしかなり得ないからです。週休3日制のようなユニークな労働条件ならそれだけでもブランドが成立しますが、全ての企業が出来ることではありません。したがって、ブランドとして打ち出すべきは、あくまで労働環境の良さにプラスアルファされる「何か」ということになります。

採用ブランディングで独自性を発揮できるのは、自社が重視するビジョン、こだわりを持っている特徴、求める人材の性質、自社において期待できる成長のイメージなどでしょう。それも「グローバルな視点」「アットホームな環境」「自己を実現できる職場」などの通り一遍の定型句ではいけません。ブランディングの手法である「コード」(キャッチコピーやスローガンなどの言語的メディア)や、他社には類例の見られない制度など、求職者が見て「この企業は他社にない特質を持っている」と思われるだけのものを表に出す必要があるのです。

自社ならではの特質、即ち採用におけるブランド・アイデンティティを表に出せば出すほど、採用におけるミスマッチのリスクは低くなります。そのアイデンティティに共感できる有能な人材が応募してくるようになりますし、逆に自分には合わないと感じた人は応募を断念するようになるからです。

採用ブランディングを効果的に実施すれば、優れた人材を確保できるようになるのと同時に、ミスマッチによる早期退職という最悪の事態を未然に防ぐことができるというわけです。