第4回 ブランディングの手順

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Project discussion

これまでの記事で見てきたように、ブランディングの意義とは、企業自体やその商品・サービスの持つ資産価値を向上させることにあります。ブランディングの成立により、「ブランド認知」「知覚品質」「ブランド連想」「ブランド・ロイヤリティ」といった資産価値が向上し、企業の調達力の強化や価格競争での優位性などのメリットが得られます。

では、ブランディングとは具体的にどのように行えばいいのでしょうか。無論、行き当たりばったりではブランディング戦略など上手くいく筈がありません。ブランドの構成要素を正しく理解し、順序立てて戦略を実施していく必要があるのです。

ブランドの構成要素

ブランディングを実施するにあたり、まずはブランドの構成要素を理解しておかなければなりません。

まず、ブランドを構築する上で最初に重要になるのが「ブランド・アイデンティティ」です。自社のブランドがどういったコンセプトを打ち出したいのか、それを明確に表現したものがブランド・アイデンティティであり、いわばブランドが象徴するもののことです。

ブランド・アイデンティティは、そのブランドが象徴する「高級志向」や「安くてオシャレ」といった普遍的な価値やイメージを表すものであり、時代や状況を超えて不変のものでなければなりません。これがブレるとブランド全体の価値を損なうことになります。ゆえに、ブランド・アイデンティティを策定するにあたっては、自社の性質や目指すべき地点を熟慮し、50年経ってもそのアイデンティティを掲げ続けられるような内容にすることが肝要です。

このブランド・アイデンティティがブランドのピラミッドの頂点だとすると、その下の層に位置するのが言葉やデザインといった抽象的なブランドメディアです。ブランドの理念であるブランド・アイデンティティを一段階具現化したものであり、専門的には「コード」や「スタイル」と呼ばれることもあります。ここで「コード」というのは、キャッチコピーやスローガンなど、ブランド・アイデンティティを言葉の形で表したものです。一方の「スタイル」とは、目に見える形でブランド・アイデンティティを表現したものであり、製品デザインのコンセプトなどがこれにあたります。いずれもブランドのイメージを社会に打ち出すために欠かせないものですが、「抽象的な」と断りを付けた通り、この時点ではまだブランドの構成要素の仕上げではありません。

抽象的なブランドメディアのさらに下の階層を支えるのが、TVのコマーシャルや雑誌広告などの可視的なブランドメディアです。クリエイティブと呼ばれる人々が能力を発揮するのはこの部分です。この可視的なブランドメディアが多くの人の目に触れることによって、企業の掲げるブランド・アイデンティティは世間に浸透していくことになります。

実際のブランディングの工程

現実にブランディングを実施する手順は、企業の性質や市場の状況によって様々ですが、重要な工程はどの場合でも概ね共通しています。

ブランディングは、競合他社の商品やサービスと争い、競合優位性を獲得するための活動です。言うなれば市場での生き残りを賭けた熾烈な戦いということになります。それだけに、何よりもまず、戦う目的と戦う相手を明確にすることが重要です。具体的には、「何の商品・サービスの市場に参入するのか」「どんなターゲットユーザーが想定されるか」「競合との差異は何か」などの要素を、経営学でお馴染みの3C分析やSWOT分析といった手法を用いて炙り出すのです。この環境分析をしっかり行うことにより、その後のブランディング戦略の方向性をブレずに明確化することができます。

さて、環境分析によって戦いの目的や相手が明確化されれば、今度はブランドの最重要要素であるブランド・アイデンティティを策定します。既に参入市場やターゲットユーザーは明確化されている筈ですから、ユーザーに自社のブランドに対してどのようなイメージを持ってほしいのか、自社はユーザーにどのような価値を提供したいのか、などの方向性を確定していくことが出来る筈です。もっとも、ここで競合他社と全く同じイメージや価値しか打ち出せないのであれば、単なる価格競争になってしまいますので、いかに自社ブランドに個性を持たせるかが至上命題になります。言ってみれば、ブランド・アイデンティティの策定は、自社のブランドが競合に対してどのような戦力を持っているのかを明文化する作業なのです。

ブランド・アイデンティティを策定したら、次はブランドの構成要素のピラミッドに従い、抽象的なブランドメディアから可視的なブランドメディアへと段階的にコンセプトを落とし込んでいきます。抽象的なブランドメディアは、キャッチコピー(コード)やデザイン(スタイル)など、可視的なブランドメディアを創出する源泉となるものです。これをもとに動画メディアや紙媒体といった可視的なブランドメディアを制作し、それを発信する広告媒体を選定することになります。TVや雑誌、WEBなど、広告を載せる媒体によってユーザーの性質や宣伝コストも変わってきますので、自社のターゲットユーザーに最も効果的にアプローチできる広告方法を選定することが重要です。

巷に溢れる様々な商品やサービスのブランドは、概ねこうした手順によって形作られ、社会に向けて発信されているのです。