第3回 ブランディングの必要性

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Composition with cup of Starbucks coffee and beans

自社の商品やサービスのブランド価値を高める「ブランディング」という活動。この言葉が社会に浸透する以前は、ブランドを標榜するのはファッションや輸入車などの高級消費財や、トヨタやソニーといった大企業だけであると思われていました。しかし現在では、企業の大小やサービスの種類を問わず、多くのビジネスシーンでブランディングが意識されるようになっています。

では、そもそもなぜ一般企業にまでブランディングが必要なのでしょうか。企業がブランディングによって得られるものは何か、そして逆にブランディングを怠るとどういうことになるのか、考えてみたいと思います。

価格競争からの脱出

中小企業や飲食店、美容室、塾、士業などのスモールビジネスにおいて何より大事なのは、競合との価格競争に巻き込まれることなく、長期的に利益を増やし経営を安定させていくことです。しかし、価格競争に巻き込まれないというのは存外、大変なことです。消費者は少しでも安く商品やサービスを購入したいに決まっています。価格競争に陥らずに経営を安定させるためには、他所より高くても選んでもらえるという「何か」が必要不可欠です。この「何か」を担うのがブランディングなのです。

スモールビジネスという枠とは異なりますが、カフェチェーンの「スターバックス」の例を思い出してみましょう。スターバックスの商品は同種のカフェと比べて割高ですが、それでもスターバックスを選ぶファンが多数存在しており、競合優位性を確立するに至っています。他のカフェに負けないように値下げ競争をするとか、利益度外視でサービスを安売りするといった努力は、最早スターバックスには必要ないのです。

これは何もスターバックスのような大規模チェーンにしか出来ないことではありません。街の片隅にひっそりと存在する個人経営の店舗であっても、価格以外の価値をお客さんに認められ、値下げの必要性に迫られることなく安定した経営を続けているお店は現実に存在しています。逆に、競合と張り合えるブランドイメージを何も打ち出せていないビジネスは、際限のない値下げ競争に陥り続け、品質の低下や赤字経営を招くことにもなります。

ブランディングは、価格競争の負のスパイラルからスモールビジネスを救い出す命綱なのです。

調達力の強化

ブランディングによって得られるものは、価格競争からの脱却だけではありません。ブランド価値を高め、自社の存在が好意的なイメージで社会に知られるようになれば、様々な面での調達力を強化することにも繋がります。企業を経営していくには、資金、人材、売上、販路、取引先など様々な要素を調達しなければなりませんが、正方向のブランディングが成立していればそれらの調達も容易になります。ブランドは企業を成長させるというわけです。

いかなる企業にとっても新規営業は大変なものです。新たな顧客を獲得しようと精力的に営業をかけても、無名な企業の無名な商品・サービスでは門前払いのような対応を受けることも多いでしょう。しかし、ブランディングを熱心に行い、自社ブランドを少なからず世間に知らしめることができれば、「TVのCMでよく聴くあの商品か」「雑誌で見たあのサービスか」などと消費者からの関心が得られ、新規顧客の開拓が格段に容易になります。商品やサービス自体の質が優良なものであれば、興味本位で手を出してくれたお客さんがそのままリピーターになり、固定客が増えていくことになります。そうした正のスパイラルが成立してしまえば、スターバックスのように、特に宣伝を打たなくてもお客さんが途切れないという状況が実現できるのです。

また、顧客や取引先の開拓のみならず、人材採用に関してもブランディングは威力を発揮します。自社ブランドの知名度が上がることにより、自社のブランド・アイデンティティを理解した優秀な人材が求人に応募してくれるようになり、ミスマッチを極力排した有意義な人材採用が出来るようになります。

ブランディングを後回しにするとどうなるか

ブランディングを怠った企業は価格競争から脱出できなくなると先に述べました。競合との差別化や、ブランド・ロイヤリティの獲得ができていない企業にとって、簡単に顧客を呼び込む方法といえば価格を下げること以外にないからです。

価格を下げるとそれだけ利益率が下がりますので、やむなくコストの削減や作業の効率化を進め、何とか利益率を担保しようとします。ここで、最も下げやすいコストとして多くの企業が認識してしまうのが広告宣伝費です。売上に直接影響しない要素ですし、宣伝は「贅沢」であるという意識を持つ人も多いので、削減することに心理的抵抗が少ないのでしょう。しかし、ただでさえ商品・サービスが売れていないのに、プロモーションに掛ける費用まで削ってしまえば、新規顧客を呼び込む力がさらに弱まるのは必然です。かくして、市場におけるシェアは緩やかに低下していき、シェアを取り戻すためにまた価格を下げなければならないという負のスパイラルに陥ることになります。その上、競合他社は一足先にブランディングの重要性に気付き、それぞれのブランドを成長させていきますから、そうした競合の台頭によって自社のシェアはますます低下していくのです。

ブランディングは他社を出し抜くための武器になるだけではありません。放っておくと競合に先手を取られシェアを失ってしまう、それを未然に防ぐために必要不可欠な防御手段でもあるのです。