第2回 ブランディングの成功例と失敗例

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現在、多くの企業がその重要性を認識し、心血を注いでいる「ブランディング」という活動。ブランディングを制する者こそが、現代の物量社会において勝者たりえるのだと言っても過言ではないのですが、では、そのブランディングの成功・失敗はどのように定義付けられるのでしょうか。

先の記事では、「ブランド認知」「知覚品質」「ブランド連想」「ブランド・ロイヤリティ」という4つの観点でブランドの資産価値が表されることを述べました。つまり、ブランディングに成功しているとは、これらの資産価値を見事に獲得できている状態のことを指すのだと言えます。

逆に、ブランディングを意図して活動したものの、これらの資産価値がむしろ下がってしまったという場合は、そのブランディングは失敗だったということになります。

スターバックスのブランド力

先の記事で述べたブランディングの意義の一つに、ブランドの確立によって価格プレミアムを獲得でき、同種の商品やサービスを競合よりも高く買ってもらうことができるという点がありました。その典型例は、いわゆるブランド物のバッグや時計、高級外車などですが、ここではより身近な例として、カフェチェーンの「スターバックス」の事例を見てみましょう。

スターバックスは、数あるカフェチェーンの中でも多くの固定客を獲得できていることで有名です。価格は同種のカフェと比べて高い部類に入りますが、それでもスターバックスを選ぶ人、いわば「ファン」が付いている。ブランディングによる資産価値の向上が成立している好例です。スターバックスのファンは、勉強や友人とのお喋りの場所に迷わずスターバックスを選びますし、新商品が出れば特にコマーシャルなどしていなくてもそれを目当てにスターバックスに足を運びます。そう、ここで注目すべきは、スターバックスはTVのコマーシャルなどを別段打ってはいないということです。そういうことをしなくても固定客が離れないというところまで、ブランド価値を高めきっている。ブランディングが成功すれば広告宣伝費は必要なくなるということの分かりやすい実例と言えるでしょう。

ブランド連想という資産価値

スターバックスの利用客というと、青空の写真をポエム的な文章と一緒にツイートする芸術系女子、Macのリンゴを光らせて悦に浸る意識高い系男子など、多分に揶揄が入ったステレオタイプが巷間には溢れているようです。その是非はさておき、「スターバックスの利用者」として一定の連想が出来上がっているのは何気に凄いことです。ブランドの資産価値の一つである「ブランド連想」が強固に打ち立てられている訳です。

ここまで来ると、今度はブランドから連想されるイメージの方が現実を引っ張るという現象も起こります。芸術系や意識高い系を気取りたい若者は、「それならスターバックスに行かなければ」と一種の強迫観念でスターバックスを愛用するようになるのです。これはスターバックスにとって悪いことではありません。そうした意識に基づいてスターバックスを利用するのは、友人も多く、周囲への影響力も強い、いわばスクールカーストのマジョリティ側に属する若者達であることが多いでしょう。その若者達を揶揄する声があったとしても、スターバックス自体が嫌われている訳ではありません。現実にスターバックスが若者の人気スポットであることは揺るがないのであり、これもまたブランディングの正の側面と言えるでしょう。

ブランディングはアイデンティティがブレると失敗する

後の記事で詳しく述べますが、ブランディングの実施にあたっては、まず自社の掲げる「ブランド・アイデンティティ」を明確化することが重要です。これはブランドが象徴する普遍的な価値となるものであり、時代が変わっても揺るがないアイデンティティでなければなりません。

そのアイデンティティを見誤ってしまった例として知られるのが、「ユニクロ」の野菜事業です。誰もが知る通り、ユニクロは衣料品を生産・販売する企業であり、安価で実用的というブランド認知がなされています。そのユニクロが2002年頃、野菜の通信販売事業に手を出し、「何故ユニクロがこんなことを?」と世間の驚きや困惑を呼びました。良質な野菜を安定した価格で販売するというコンセプトを掲げて始まったユニクロの野菜事業ですが、売上はさっぱり伸びず、26億円の赤字を出して2004年3月には事業撤退。僅か1年半での頓挫となったのでした。

この失敗の理由は、ユニクロという企業が既に衣料品店としての強固なブランドイメージを築いていたことに尽きるでしょう。巷の消費者にとってユニクロは安価な服屋さん以外の何物でもないのであり、そのユニクロが突然野菜の販売を始めるといっても全くピンと来なかったのです。また、安価をウリにしている以上、どうしても「安かろう悪かろう」の偏見からは逃れられず、生鮮食品の販売という業態とは致命的なミスマッチがありました。

ユニクロの例から学べるのは、ブランディングは万能の武器ではなく諸刃の剣だということです。一度定めたブランド・アイデンティティは決してブレさせてはならないのであり、それゆえに、初動の段階で自社に合ったブランド・アイデンティティを築き上げ、それを守っていくことが何より重要になるのです。