第64回 法則編(16)国境の法則(2)

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本当に国際的というのは、
自分の国を、あるいは自分自身を知ることであり、
外国語が巧くなることでも、
外人の真似をすることでもないのである。
(白洲次郎の妻、白洲正子の言葉)

グローバルブランドの本質

前回の記事では、オランダビールの「ハイネケン」などを例に、ブランドのグローバル展開の意義や、成功しうるグローバルブランドの条件について説明しました。
今回は引き続き、アル・ライズとローラ・ライズの共著「ブランディング22の法則」から「国境の法則」を取り上げ、自国のイメージを利用したグローバルブランドの本質に迫ってみましょう。

グローバルブランド成功の道

ブランドのグローバル展開は、「拡張の法則」や「ライン延長の法則」の禁を犯すことなく商圏を拡大できる格好の手段です。全てのブランドには必ずその帰属する国があり、全ての国には好悪様々なイメージがあります。グローバルブランドを成功させるためには、ブランドのカテゴリーと自国のポジティブイメージを上手く合致させ、いわば「国のブランド力」を自社ブランドのブランド力に転化させることが重要です。

しかし、商品カテゴリーと強く結びついた国のブランドでなければグローバルブランドになれないわけではありません。前回の記事で紹介したオランダの「ハイネケン」は若干反則的な成功例でしたが、カテゴリーから真っ先に連想されうる国(ここではビールに対してのドイツ)のブランドではなくとも、市場の核心部分とは違ったセグメントを狙うことでグローバルな成功を収めることは可能です。

メキシコ製ビールの「コロナ・エクストラ」は、欧米でのメキシコ料理ブームに上手く便乗する形で世界的ブランドになりました。日本のキリンビールや中国の青島ビールもまた、それぞれの母国はビールとの繋がりが強い国とはいえませんでしたが、日本料理や中国料理を利用する形で世界に名を知られるブランドとなりました。
既存市場で大手競合と張り合うのではなく、一番手になれる新カテゴリーを創出するべきだというブランディングの基本は、グローバル規模でも活きてくるものです。

自国のイメージを利用する

グローバル市場にブランドを売り込むためには、自国についてのイメージを最大限に利用することが肝要です。「コロナ・エクストラ」はその最たる例といえます。このブランドの立ち上げ当時、メキシコの酒といえば、柑橘類を添えたテキーラというイメージが一般化していました。コロナ・エクストラはこのイメージをブランディング戦略に利用し、コロナのビンの先端に乗った爪楊枝とライムをビジュアルシンボルとして採用したのです。

この戦略が当たり、コロナは米国でハイネケンに次ぐ第二位の輸入ビールとなりました。さらに、米国への輸出が成功を収めたことで、メキシコ国内でも売れ行きが向上し、コロナはメキシコを代表するビール・ブランドの地位にも輝くことになりました。
グローバルブランドの構築は、いわば国を挙げたイメージ戦略の総力戦といえるでしょう。そしてその成功は、海外市場のみならず、自国市場でのシェアも高める結果に繋がるのです。

自国の感覚に根差したブランド価値

グローバルという言葉からは、自国への帰属を超えた「国際的な感覚」なるものを想像する人が多いかもしれません。しかし、ライズは、自国に関する感覚から離れたグローバルブランドなどというものは存在しないと言い切っています。国外で受け入れられるブランドとは、あくまで自国に根差したアイデンティティを備えたブランドにほかなりません。

トヨタ、ホンダ、日産は、日本的な感覚を備えたグローバルブランドです。
コンパック、インテル、マイクロソフトは、アメリカ的な感覚を備えたグローバルブランドです。
グッチ、ベルサーチ、アルマーニは、イタリア的な感覚を備えたグローバルブランドです。

全てのブランドは、他国で生産され、他国で消費されていようとも、あくまで「本籍地」である本国に根差しているべきだというのが「国境の法則」の本質です。

コカ・コーラは、利益の80%を米国外での販売に依存しており、自らを「アメリカのブランドではなくグローバルブランドである」と主張しています。しかし、ライズは、コカ・コーラはアメリカの遺産を捨て去るべきではないといいます。音楽、映画、テレビなどに代表されるアメリカ文化は全世界に浸透しており、コカ・コーラはそのアメリカ文化との関わりによって多大な利益を得ているブランドです。世界のどこの国の消費者であっても、コカ・コーラを口にするとき、遠いアメリカへの憧れを頭のどこかに思い浮かべていることでしょう。そうしたブランド連想こそがグローバルブランドの価値なのです。