第62回 法則編(14)色調の法則

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ブランドの個性を決めるカラー

 ロゴと並び、ブランドの視覚的なシンボルとなるのがアイデンティティ・カラーです。今回はアル・ライズとローラ・ライズの共著「ブランディング22の法則」から「色調の法則」を取り上げ、ブランドのカラーの選択手法や、競合との差別化について述べていきます。

法則17. 色調の法則

 前回の「形状の法則」と並び、ブランドのデザイン面に触れたもう一つの法則が「色調の法則」です。どの色をブランドのアイデンティティ・カラーにするかの選択は、ブランドロゴの形状のデザインに勝るとも劣らない重要事項です。

 ブランドネームは無数の言葉の組み合わせから選ぶことができますが、色の扱いとなるとそう簡単にはいきません。消費者が認識しうる色の種類はごく限られているからです。ライズによれば、ブランドが使うべき色の種類は、「赤、オレンジ、イエロー、グリーン、ブルー」の基本五色と、「黒、白、グレー」の無彩色にほぼ限られており、中間色や混合色を使うよりも、これらの基本的な選択肢の中から選ぶのがベストであるとのことです。

 ブランディングの鉄則は「ブレない」ことですが、これは色の選択にも当てはまります。自社ブランドの商品に様々な色を使い分けるのではなく、あくまで一つのアイデンティティ・カラーに絞ったブランド展開を心がけるべきです。その好例としてライズが挙げているのがティファニーです。ティファニーは、独特の緑がかったブルーを一貫してブランドの色として使い続けています。夫や恋人からこの色の箱を渡された女性は、箱を開ける前から中身が素敵なプレゼントだとわかるのです。もしティファニーが様々な色を使い分けていたら、ここまでのブランドの成功はなかっただろうとライズは述べています。

カテゴリーと調和する色

 よく言われることですが、赤は情熱や興奮、青は静かで落ち着いた印象など、それぞれの色には連想されるイメージがある程度定まっています。ライズもこれを認めており、赤は注目を引くための「小売店用の色」、青は安心感を伝えるために使われる「企業用の色」であると述べています。コカ・コーラは赤、IBMは青をブランドカラーにしていますが、これは商品の訴求と企業の訴求というそれぞれの目的に叶ったカラー選択といえます。

 この他、白は清純、黒は贅沢、青はリーダーシップ、紫は王侯貴族、緑は環境や健康といったイメージと結び付きやすいとライズは挙げています。これは英語圏でのイメージですが、日本人にもそれとなく同意できる部分が多いでしょう。

 ブランドのカラー選択において第一に重視するべきは、ブランドが扱う商品カテゴリーに最も似つかわしい色を選択することです。米国の農業機械メーカーであるジョン・ディアが、草、樹木、農業を連想させる緑をブランドのアイデンティティ・カラーに据えたのは自然な選択であるといえます。

 しかし、全てのブランドがカテゴリーに最適の色を選んでいたら、同じカテゴリーのブランド同士で常に色が重複することになってしまいます。そこで、次に述べる差別化の観点が必要になるのです。

競合と差別化する

 カテゴリーから真っ先に連想されうる色をブランドのアイデンティティに選択できるのは、あくまでそのカテゴリーにおけるリーディングブランドだけです。後発となるブランドは、先発ブランドのアイデンティティとして確立されている色を避けるようにして自社ブランドのカラーを選ばなければなりません。

 ライズ親子がブラジルの農業機械メーカーからブランディングの依頼を受けたとき、既に市場第一位のジョン・ディアが緑をアイデンティティ・カラーとして押さえており、また第二位のブランドは赤を使っていました。そこで、ライズはこれらと重複しないように青をブランドのアイデンティティとしたのです。こうして生まれたブランドが「マキシオン」でした。

 ライズいわく、青は必ずしも農業用トラクターに似合う色とは言えませんが、それよりも独立したブランド・アイデンティティを創造することのほうが重要だということです。

 コカ・コーラのカラーは言わずと知れた赤ですが、これはコーラが赤褐色の液体であることから自然に導かれる正解です。これに対し、後発ブランドのペプシコーラは当初、赤と青の二色をブランドのカラーとして掲げました。しかし、消費者の目からすると、これは至る所にコカ・コーラの看板が溢れているのと同じです。ペプシの看板はカラーの差別化が不十分であったために、コカ・コーラの赤の海に埋没してしまっていました。

 その後、ペプシコーラはブランドのアイデンティティを青一色に絞り、遅まきながらコカ・コーラとの差別化に着手しました。現在では、「赤のコカ・コーラ」対「青のペプシコーラ」という構図も消費者の頭に入り、二大ブランドが対等な存在と意識されるようになってきた感があります。

 ブランディングは競合との差別化のために行うものだということは、どの局面でも忘れてはならないのです。