第61回 法則編(13)形状の法則

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消費者を引きつけるロゴ

 ブランドを視覚的に表すロゴは重要なものですが、その扱いには注意を要する点もあります。今回はアル・ライズとローラ・ライズの共著「ブランディング22の法則」から「形状の法則」を取り上げ、ロゴタイプの理想的な形や、多くのブランドが陥ってしまう落とし穴について説明します。

法則16. 形状の法則

 ブランドを語る上で、デザインの話は避けて通ることができません。ライズ親子はブランドのデザイン面についても法則を提唱しています。それが今回取り上げる「形状の法則」、そして次回の記事で述べる「色調の法則」です。

 十六番目の法則である「形状の法則」は、ブランドの「顔」ともいえるロゴタイプの在り方について述べるものです。ライズはまず「ブランドのロゴタイプは(顧客の)目にフィットするようにデザインすべき」といい、ロゴタイプの理想的な形は、幅2.25:高さ1の横長型であると述べています。人の目は横に並んでいるため、視覚的インパクトを最大にするためには、ロゴタイプはちょうど車のフロントガラスのような横長の形が望ましいというのです。

 その理想形に当てはまる例としてライズが挙げているのが、レンタカー会社「エイビス」のロゴタイプです。この形状は、ビルの上、パンフレット、レターヘッド、広告、名刺など、いかなる場所においても最大の視覚的インパクトを顧客に与える力を持っています。

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 一方、縦長のロゴタイプは、小売店舗などでは特に不利になるといいます。ライズはファーストフード・チェーンの「アービーズ」を例に挙げていますが、こうした縦長のロゴは、ネオンのジャングルの中では顧客の目に付きづらく、横長型を採用した他のブランドの看板に負けてしまうというわけです。

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ロゴはフォントより読みやすさ

 ロゴタイプはブランドの「顔」となるものですから、形と同様、判読しやすさが極めて重要になります。ライズは、ブランド特性を表現しようとするあまり、極端なフォントを選択してブランド名が判読できなくなってしまうケースへの警鐘を鳴らしています。

 確かに、フォントの違いが印象の違いに結びつくことはあります。ゴシック体は現代風、セリフ体は昔風、肉太の活字は男性的、肉細の活字は女性的など……。しかし、こうした違いを見る人に伝わるように表そうと思えば、フォントの特徴を相当に誇張しなければなりません。その最たる例は、ニューヨーク・タイムズのロゴタイプに使われている「ブラックレター」という装飾文字です。

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 いかに「歴史があって安定したブランド」という印象を出したいといっても、新ブランドのロゴタイプをこのフォントで作りたがる人はいないでしょう。視覚的なインパクトを与えることはできても、ブランド名を判読し、記憶してもらうことはほぼ不可能に思えるからです。
 極端に誇張されたフォントなどよりも、言葉そのものの方が遥かに強烈にブランドの力を消費者に伝えます。フォントはコミュニケーションのプロセスに影響を与えることはありますが、ブランド名自体よりもフォントの選択が重要になることは有り得ないのです。

シンボル単体使用への警鐘

 ライズはまた、商標という視覚的シンボルの過大評価にも注意を喚起しています。ブランドの意味は、あくまで言葉の中にあるのであって、視覚的シンボルの中にあるのではないというのがライズの主張です。

 例えば、ナイキのシンボルである「スウッシュ」を見れば、誰もがナイキというブランド名を想起することができますが、ブランドの力を担うのはあくまでシンボルではなく名前です。あるシンボルが長期にわたって特定のブランド名と結びついていた場合に限り、シンボルはそれ単体でブランドの意味を消費者に伝えることができますが、ライズに言わせれば、そうすることに十年以上の時間と一億ドル以上の資金を費やしたところで大した利点はないということです。

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 単体でブランドの印象を伝えられるような視覚的シンボルの創出に心血を注ぐのは、多くの場合、徒労に終わってしまいます。メルセデス・ベンツの三ツ星のような、効果的な商標となりうる単純な形のシンボルは数えるほどしか存在しません。そうしたシンボルを古くから受け継いでいるブランドでもない限り、それを新たに創り出そうとすることは「手遅れ」であるとライズは述べているのです。