第57回 法則編(9)ジェネリックの法則

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総称的な名前はブランドにそぐわない

 ブランド名を名付ける上での失策の一つに、ジェネリック(総称的)な語彙をそのままブランド名に冠してしまうことが挙げられます。今回は、アル・ライズとローラ・ライズの共著「ブランディング22の法則」から「ジェネリックの法則」を取り上げ、なぜジェネリックな名付けが望ましくないのかを解き明かしてみます。

法則12. ジェネリックの法則

 ブランディングの法則の十二番目は「ジェネリックの法則」です。ジェネリックという英単語は近年、「ジェネリック医薬品」で有名になりましたが、元は「広く一般に使われている」という意味です。ライズがこの法則で訴えているのは、ジェネリックな語彙、つまり広く一般に使用される語彙をブランドネームに用いるのは良くないという内容です。

 ジェネリックな語彙とは、ライズの挙げるところでは「ゼネラル」「スタンダード」「アメリカン」「ナショナル」「インターナショナル」などをいいます。日本語で言うなら、会社名を「総合○○」「日本○○」などと名付けるようなものでしょうか。こうした言葉は総称的すぎてブランディングには適さないというのがライズの主張です。

 かつて、地域に根ざした無数の零細企業によって生産される日用品だけで市場が形成されていた時代においては、「ナショナル」や「アメリカン」といった大きな広がりを持つ総称的な名前がブランドネームとして機能する余地がありました。全米を股にかける大企業の総称的な社名は、地元の零細企業との対比として威力を発揮したのです。しかし、大量生産・大量消費が当たり前になった現代では、こうした総称的なブランドネームを新たに名付けることは得策とはなりません。「ゼネラル」や「スタンダード」といった社名の大企業が今なお米国で成功者の地位にあるのは、単にそれらのブランドが市場の一番手であったことによる既得権益に過ぎないのです。

普通名詞は固有名詞と認識されない

 ジェネリックな語彙がブランド名になり得ないのは、普通名詞による名称は消費者から固有名詞(ブランドネーム)として認識されないからです。英語では、単語を小文字で書き始めるか大文字で書き始めるかによって普通名詞と固有名詞を区別できますが、声に出してしまえば結局は同じです。製品の効能や特製をジェネリックな言葉で表しただけのブランド名は、ブランド名として認識されず、単にその製品の説明文として消費者の意識を通り過ぎてしまうのです。

 例えば、米国発の「ジャストフォーメン(Just for Men)」という男性用ヘアカラーがありますが、われわれ日本人がこれをブランド名として認識できるのは外国語だからです。英語圏の消費者がこの商品名をCMで見ると、「あの男性用(just for men)のヘアカラーは何という名前だったっけ……」ということになりかねません。仮に日本人が「男のヘアカラー、男のヘアカラー」と繰り返すCMを流し見していたとして、それが製品の説明ではなくブランド名だと思う人はほぼいないでしょう。

ジェネリックな語彙を一般名に変える

 元はジェネリックな語彙であっても、それを縮めたり切り取ったりして独自の名前に変えれば、立派にブランドネームとして通用します。米国発のビスケットメーカー「ナビスコ」はその好例としてライズも取り上げています。ナビスコの名の由来は「ナショナル・ビスケット・カンパニー(National Biscuit Company)」の各単語の最初の音を繋げたものです。ナショナル(全国的)なビスケットのカンパニーは多数ありますが、これを縮めて「ナビスコ」にすれば、ただ一つの企業を指すブランドネームとして成立するのです。

 NBC(ナショナル・ブロードキャスティング・カンパニー)やIBM(インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション)などは、名称に使われている語彙自体はジェネリックなものですが、略称のアルファベットの並びがそのまま企業名・ブランド名として成立している事例です。全国的な放送会社、国際的なビジネス機器の会社は世界にごまんとありますが、NBCと呼ばれるのはNBC一社、IBMと呼ばれるのはIBM一社だけであるというわけです。

他分野の一般語彙をブランドネームに

 新たなブランドに名前を付けるにあたっては、「他の分野でよく使われていて、同時にあなたのブランドの主たる特性を言い表す言葉を見つけ出すこと」が効果的であるとライズは述べています。レンタルビデオチェーンの「ブロックバスター・ビデオ」、レンタカーの「バジェット」などが好例です。ブロックバスターは「超大作映画」、バジェットは「限られた予算」といった意味の単語ですが、それぞれの言葉を上手く借用し、ブランドの属性に転化することに成功しています。これが「ゼネラル・ビデオ・レンタル」や「ロウコスト・カー・レンタル」といった名前では強力なブランドにはなれないというのがライズの主張です。

 トヨタの高級車ブランド「レクサス」の名前もライズは絶賛しています。「ラグジャリー・カー・カンパニー」といった名前ではどうしようもないところを、「Luxury」から切り出して「Lexus」と命名したのはブランディングの法則にかなっています。このように、ジェネリックな語彙の一部を切り出すことで優れたブランド名になったケースには、インテリジェント・チップに由来する「インテル」も挙げられます。どのメーカーのコンピュータにもインテリジェント・チップは内蔵(インサイド)されていますが、「インテル・インサイド」をキャッチコピーにできるのはただ一社だけなのです。