第53回 法則編(5)カテゴリーの法則

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カテゴリー

新たなカテゴリーの創造

 新発ブランドが大手競合に勝つ手段は、新たなカテゴリーそのものを創り上げることであると今まで述べてきました。アル・ライズとローラ・ライズの共著「ブランディング22の法則」の中にも、「カテゴリーの法則」としてこのことは解説されています。カテゴリーを創造する際のポイントや注意点を見てみましょう。

法則7. カテゴリーの法則

 ブランディングの第七の法則は「カテゴリーの法則」です。「拡張の法則」と「収縮の法則」で見たように、ブランドというものは取り扱う範囲を拡張すると却って力を失ってしまい、逆に焦点を絞り込めば絞り込むほど優位性を獲得することができます。焦点を絞ることの行き着く先は、先発競合の存在しない新規カテゴリーを開拓してしまうことだというのは、これまでの記事をご覧になった皆様ならお分かりでしょう。

 今回の「カテゴリーの法則」もこのことを述べるものですが、ここでは一つ、これまで注目してこなかった考え方が入ってきます。それは、ひとたび自社ブランドがパイオニアとして新しいカテゴリーを開拓した後は、後発競合の参入は脅威ではなくむしろチャンスに成り得るということです。

 ライズは、未知のカテゴリーでブランドを築くためには、二つのことを同時に行わなければならないと述べています。第一には、自社ブランドが一番手を行くパイオニアであり、オリジナルなものであるとの認識のものでブランディングを展開すること。そして第二には、新たなカテゴリー自体を売り込むことです。この「カテゴリー自体を売り込む」ということに関して、自社に追随する後発ブランドの存在も助けになるのです。

競合の出現がカテゴリーのチャンスに

 米国でドミノ・ピザが宅配ピザの事業を始めるまで、宅配ピザというカテゴリーは世の中に存在しませんでした。同社は「30分を超えた場合は50セント引き」という斬新な売り文句を武器に支持を拡大し、宅配ピザというコンセプトそのものを人々に売り込んでいきました。このように、新ブランドがカテゴリーを先取りし、そのカテゴリーを積極的に売り込むことで、強力なブランドと急成長する市場が同時に創造されることになります。ドミノ・ピザの後には二匹目のドジョウを狙う宅配ピザのブランドが多く現れましたが、そのことが消費者に宅配ピザというカテゴリーの存在をより知らしめる結果となりました。

 リーダーブランドたるもの、パイの分け前を競合と争うのではなく、パイ自体のサイズを大きくしていくことを考えるべきです。コカ・コーラとペプシコーラの広告戦争はその好例といえます。両者が争うことでメディアの関心を集め、コーラというカテゴリー自体の間口を広げているのです。

 ポラロイド社が失敗した理由の一つは、インスタント写真の市場からコダックを締め出したことでした。訴訟で数百万ドルを勝ち取ることと引き換えに、同社は、せっかくインスタント写真という市場を拡大してくれる筈だった競合ブランドを取り除いてしまったのです。

また、ベビーシャンプーのリーダーブランドであったジョンソン&ジョンソン社は、髪に与えるダメージが少ないベビーシャンプーのメリットを成人層にも売り込むためのマーケティングに打って出ました。これは功を奏し、同社は成人向けシャンプーの市場でもナンバーワンになりましたが、惜しむらくは同社に追随しうる競合ブランドがなかったことです。他のブランドが成人向けシャンプーの史上に参入してくれば、同社の売上ももっと伸びていただろうとライズは語っています。

人はブランドよりカテゴリーに気を留める

 新ブランドだけを売り込み、カテゴリーに頓着しなければどうなるでしょうか。ライズは、ブランドを売り込んでカテゴリーのことを放っておくのは「楽ではあるが効果的ではない」と述べています。

 アップル社が1990年代に販売していた携帯情報端末「ニュートン」はその失敗例の代名詞といえるでしょう。ニュートンを売り出した当時、同社はカテゴリーの名称には特にこだわることなく、単に「PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)」と呼んでいました。しかし、この呼び方では、ノートパソコンやデジタル携帯電話、デジタル時計などと役割を差別化することが困難です。発売後しばらくして、同社は「これは何だろう?」という見出しでニュートンの大型広告を出しましたが、それは同社が苦境にあることをハッキリと表していました。「これは何だろう?」という質問には、ニュートンという新ブランドを出した後よりも、出す前に答えておいた方がいいに決まっています。

 ライズは、顧客が気に留めるのは新しいブランドではなく新しいカテゴリーであると繰り返し述べています。消費者はドミノ・ピザには気を留めず、ピザが30分で配達されるかどうかを気にするのです。新しいカテゴリーのパイオニアとして名を挙げたいと考えるなら、ブランドと同時にカテゴリー自体の売り込みを怠ってはならないことが分かるでしょう。