第52回 法則編(4)信用力の法則&品質の法則

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ブランドと信用力の関係

 有名なブランドと無名なブランドの商品があれば、たとえ価格が高くても有名ブランドの方を選ぶという方は多いでしょう。消費者は、カテゴリのリーダーであるブランドを無条件に信用し、その品質も高いものであろうと思い込みます。ここにはどんな力学が働いているのでしょうか。
 今回は、アル・ライズとローラ・ライズの共著「ブランディング22の法則」の中から「信用力の法則」と「品質の法則」を取り上げ、ブランドと品質認知の関係を考えてみることにします。

法則6. 信用力の法則

 ブランディングの第六の法則は「信用力の法則」です。これまでの話とも重なりますが、ブランドの成功の鍵を握る要素は「本物訴求」、すなわち当該カテゴリの一番手を行くリーディングブランドの立場を確立することです。
 ライズ親子がこの法則の章で述べているのは、とかく消費者は懐疑的であり、製品の良さを訴求するメッセージは受け入れてくれないということです。しかし、唯一の例外が「本物訴求」です。品質の訴求を並べていくことで「本物」になるのではなく、まず「本物」であることを消費者に知らしめることで品質の訴求も信用されやすくなるという順序こそ、ブランディングが単なる品質改善やマーケティングと異なるゆえんです。
 本物訴求の力を最も物語るブランドといえばコカ・コーラでしょう。1942年、同社が「コカ・コーラに類似した唯一の製品はコカ・コーラそのものだ。これこそ本物である」というキャッチコピーを掲げた広告プログラムを開始した途端、顧客は直ちに「その通りだ」と反応しました。この「本物」というスローガンは1970年に一度復活し、それ以降は表立って使われてはいませんが、今なおコカ・コーラというブランドを象徴するフレーズとして消費者の脳内に共有されています。前回紹介した「言葉の法則」がしっかりと活きている例でもあります。
 ブランドの信用力とは、ライズに言わせれば、ブランドの性能を保証するために差し出す担保物件です。ブランドが正しい信用力を備えていれば、消費者はブランドについて語られる内容をほぼその通りに信じてくれるのです。

リーダーになることが信用力の近道

 信用力を確立する一番の近道は、カテゴリのリーダーになることです。より正確に言えば、カテゴリのリーダーであると消費者に認知されることです。コカ・コーラに信用力が認められているのは、コーラというカテゴリにおけるリーディングブランドであると誰もが知っているからです。
 しかし、既存のブランドがしのぎを削る市場において、後発ブランドがリーダーの座に収まるのは簡単なことではありません。そこで有効となる手段は、過去の記事でも繰り返し述べてきたように、自社ブランドがリーダーであると宣言できる新たなカテゴリを創造することです。
 例えば、ポラロイド社の成功の鍵は、インスタント写真という新しいカテゴリを創造したことでした。インスタント写真がポラロイドの名前とともに世に出回るにつれて、「インスタントフィルムを買うならポラロイド」という認識が消費者の間に形成されていったのです。一方、通常の写真フィルムの分野では、ポラロイドはコダックという既に存在したリーディングブランドに全く対抗できませんでした。通常のフィルムに関する信用力は既にコダックが掌握しており、後から入り込むことは不可能だったのです。「拡張の法則」で紹介したように、無闇矢鱈に多くのカテゴリに参入せず、勝負所をあくまで一握りの分野にとどめることが長続きするブランドのセオリーです。

法則7. 品質の法則

 次に出てくる「品質の法則」は、「信用力の法則」と切っても切れない関係にあります。これは、製品の品質とブランドの成功は直接には関係しないという法則です。例えば、ロレックスは世界で最も有名な高級時計のブランドですが、同社の成功には時計そのものの品質は関係していないだろうとライズは述べています。もちろん、ロレックスの作る時計が高品質であることに違いはないでしょうが、それはブランドの成功にとって重要なことではないというのです。
 ロレックスは他の時計よりも正確に時を刻むのか。ライカなら他のカメラよりも良い写真が撮れるのか。モンブランは他の万年筆よりも書きやすいのか。これらの設問にはっきりイエスと答えられる方はいないでしょう。「本物」のコーラとして知られるコカ・コーラにしても、ブランド名を隠した味覚テストではペプシコーラに敗れてしまうのは有名な話です。それでも消費者がリーディングブランドの製品を選ぶのは、ひとえにリーディングブランドだからという理由に過ぎません。だからこそ、ブランディング戦略は何事にも優先すべき課題となるのです。

ブランディングこそが品質認知を生む

 消費者の頭の中に品質の認知を築くベストな方法は、ブランディングの法則に従うことであるとライズは言い切っています。例えば「収縮の法則」は、ブランドの焦点を絞ることが成功に繋がるという内容でした。ブランドの焦点を絞るとは、ゼネラリストではなくスペシャリストになることを意味します。そして、一般的に、スペシャリストは他者よりも多くのことを知っているとみなされる――つまり「高品質」であるとの認知を受けることになります。
 スペシャリストになることは、優れたブランドネームを付けられることにも繋がります。「拡張の法則」を犯し、焦点がぼやけてしまっているブランドには、強いインパクトのある名前を付けることは難しいでしょう。
 ライズはまた、高品質という認識を築くためのもう一つの要素は、価格を高く設定することだといいます。これもブランディングの本質として繰り返し述べてきたことと同じです。高品質であるのは望ましいことですが、ブランドは品質だけで築かれるものではありません。同じような価格の同じような商品が並んでいる市場における優れたブランディング戦略とは、一際高い価格設定でブランドをスタートさせ、その高価格を正当化するためにブランドに何を組み入れることができるかを自問し模索していくことなのです。
 焦点を絞ること、優れた名前を付けること、そして価格を高く設定すること。高品質ブランドの構築には、この三つの組み合わせが必要であるとライズは述べています。