第50回 【法則編2】 パブリシティの法則&広告の法則

    Posted in: ブランディング講座

ブランドと広告の真の関係

 皆さんはスターバックスのTVCMや折り込みチラシを目にしたことはあるでしょうか。改めて考えてみると、スターバックスというブランドの一般浸透度に反し、TVや新聞、雑誌などでの広告を全く目にする機会がないことにお気付きになるかと思います。なぜスターバックスは広告を打たないのでしょうか。一方、マクドナルドやコカ・コーラといった巨大ブランドが頻繁に広告を出すのは何故なのでしょうか。
 今回は、アル・ライズとローラ・ライズの共著「ブランディング22の法則」の中から、「パブリシティの法則」と「広告の法則」を取り上げ、ブランドと広告の本当の関係に迫ってみましょう。

法則3. パブリシティの法則

 ブランディングの第三の法則は「パブリシティ」です。ライズ親子は「ブランドが誕生するのは、広告によってではなく、パブリシティによってである」と述べています。後の「広告の法則」とも繋がる話ですが、ブランディングと広告の関係を考える上で重要なのは、「ブランドの構築」と「ブランドの維持」を混同してはならないということです。マクドナルドやコカ・コーラのような大型ブランドは、そのブランドの力を維持するために広告を打っています。そうしたブランドを維持するには確かに広告の力が必要でしょう。しかし、全く新しいブランドが、広告の力だけで有名になるということは有り得ません。広告はブランドの維持に使われるものであって、ブランドの構築においては用をなさないのです。
 情報過多社会といわれる現代にあって、広告に代わって新ブランドの知名度拡大に寄与するのがパブリシティです。つまり、多くのメディアに取り上げられ、世間の注目を集めることです。最もその近道となる方法は、「一番手になること」、言い換えれば「新しいカテゴリーにおける一番手のブランドになること」であるとライズは述べています。これまでの記事で度々紹介してきた「ブランディングでは一番手を目指すべき」という方針はここに繋がるのです。

一番手であることがパブリシティを生む

 後発ブランドが既存のカテゴリーで一番手になるのは容易なことではありませんが、競合他社が手を出していない独自の勝負ポイントを打ち出し、新たなカテゴリーを生み出すことは、中小企業や個人レベルの事業であっても可能です。これまでに紹介してきた高糖度トマト「アメーラ」や、「近大マグロ」、特撮番組の「牙狼」などはそうした事例でした。新たなカテゴリーの一番手という地位を開拓することができれば、莫大な広告費用を投じなくても、パブリシティによってブランドの知名度を拡大していくことが可能です。ニュースメディアは必ずしも最も優れたものを報じるではなく、初めてのもの、強烈なものを報じたがるものであるとライズも述べています。
 アメーラブランドを展開するサンファーマーズ社の稲吉社長は「消費者は、どこにでもあるものには高いお金は出しません。要するにオリジナルでなければならないのです」と語っていましたが、パブリシティにおいても同じことが言えます。メディアは、どこにでもあるものは報じてくれません。オリジナルのカテゴリーを開拓できたブランドだけが、パブリシティの恩恵を受け、好調なスタートを切ることができるのです。

法則4. 広告の法則

 ブランディングの第四の法則は「広告」です。上で述べたように、ひとたび誕生し世の中に受け入れられたブランドは、その地位を維持するために広告の力を必要とします。ここで、ブランドにとっての広告予算とは、国家にとっての防衛予算のようなものであるとライズは述べています。多額の広告費用は、それだけで何かを得られるものではありませんが、競合他社にマーケットシェアを奪われることを防いでくれるのです。
 では、ブランドリーダーとなった企業は何を広告するべきなのか。それは言うまでもなくリーダーシップであるとライズは言います。消費者の行動を決定付けるのは、「ベターである」という情報ではなく「ベストである」という情報にほかなりません。コカ・コーラなら「本物」、ビザなら「世界ナンバーワンのクレジットカード」、グッドイヤーなら「タイヤのナンバーワン」といった具合に、このブランドの商品こそがリーダーであると強く印象付ければ、消費者は同時に「ならばその商品はベターなものに違いない」とも考えてくれるのです。
 実際、大企業が自社ブランドを守るために投じる広告費用は莫大なものです。その広告は、今さら知名度を上げようというのではなく、周辺の競合他社に対して「このブランドを攻め落とすには莫大な費用や労力が必要になる」と知らしめることでブランドを守る防波堤の役目を果たしているのです。

大ブランドの防波堤を前にしてどうするか

 「広告の法則」は、大ブランドがその地位を守るための防衛的な広告について述べたものですが、これを後発ブランドや中小企業の側から見ると、「そうした大ブランドは莫大な広告費用を投じて防衛線を張っているから、簡単に攻め落とせるものではない」という結論になります。では、後発ブランドはどう戦うか。その答えが、過去の記事で繰り返し述べてきた「ブランディングのゲリラ戦」ということになるのです。
 正攻法の物量戦では、「広告の法則」に則って守りを固めているブランドリーダーには敵いません。そこで、競合と食い合わない新たなカテゴリーを開拓し、棲み分けを成立させることで、新しいカテゴリーのリーダーとしてブランドを成功に導くのです。勿論、先述の「パブリシティの法則」がここで活きてくることは言うまでもありません。
 ここまでに紹介してきたゲリラ戦ブランディングの考え方は、実は「パブリシティの法則」と「広告の法則」という二つの掟から必然的に導かれるものだったのです。